2016年12月24日、朝日新聞に
『有罪判決うけた外国人「仮放免」中に逃亡が相次ぐ!』というニュースがありました。内容は、強盗や強制わいせつ、覚醒罪事件に関わり、有罪判決をうけた外国人が、仮放免中に逃亡するケースがあいつぎ、入国管理局が行方を追っているというものです。
「仮放免」は、身柄の拘束を一時的に解くものです。まず、病気や裁判などを理由に、保証人をたてます。そして、保証金(刑事事件でいう仮保釈金のような)を払い、一時的に「(社場)そと」にでられるものです。保証金は、300万円以下となっていますが、通常30万円とか、50万円のように100万円以下が多いようです。
なぜ、刑事事件なのに逃亡してしまったのでしょう?それは、「ガラ(身柄)」を入国管理局へ引き渡すからです。
有罪判決となれば、「退去強制」が確定!それなら一層のこと逃げちゃえ!ということでしょう。
次のような流れになると思います。
- 強盗事件で逮捕されてしまった「A」外国人。
- 「A」は、警察の留置所で取り調べを最大21日受け、起訴され、裁判になる。
- 日本人の場合は、刑事裁判になるまでは、仮保釈がでないかぎり、警察の留置所で刑事裁判の日を待ちます。
- 外国人「A」の場合は、「ガラ(身柄)」を警察から入国管理局に引き渡します。
- 入国管理局は収容中に「仮放免許可」が行われ、「A」を「社場(そと)」にだすわけです。自宅等から、裁判所に行き、有罪判決後に逃亡してしまっている、ということです。
入国管理局では、「仮滞在」と「仮放免」という手続きが行われます。どちらも「社場(そと)」にでられるときがありますので、次で説明します。
【仮滞在許可について】
不法在留者や退去強制者が強制送還をのがれるために、難民申請をするケースが多くなっています。このよう場合「難民認定手続き」と「退去強制手続き」が同時に進行します。
仮滞在許可の申請をし、仮滞在が許可になれば、結果、退去強制手続きは停止になります。仮滞在許可は、入管法第61条の2の4の除外事項に該当しない限り、羈束的(必ず)許可になるものです。
難民認定申請をする退去強制該当者は、収容されながら、退去強制手続きと難民認定手続きをとることになりますが、この「仮滞在」が認められると、退去強制手続きは停止になるので、ガラ(身柄)は、収容所からでるわけです。下記で説明する「仮放免」とはあきらかに、違います。難民認定が不認定になれば、再度、収容ということになります。
「仮滞在許可」は、在留資格ではありません。あくまでも難民認定申請の結果がでるまでの、「事実上の居住許可」のというものです。もちろん働いてはいけません。
しかし、入管法第61条の2の4の除外事項には、「不法滞在者に対し、難民認定申請を行ったことのみを理由として仮滞在の許可をあたえない!」と明記されていますので、「退去強制手続き」、「難民認定手続き」から、「仮滞在許可」はむずかいしいものです。
【仮放免許可について】
先ほどの「仮滞在許可」の入管法第61条の2の4の除外事項になり、「仮滞在許可」が得られない場合はどうなるのでしょうか?
この場合、収容されたまま、「退去強制手続き」と「難民認定手続き」が進行します。退去強制になる外国人でも難民認定申請者の場合、難民認定が「不認定」の裁決がでない限り、現状、退去強制されないということになっています。
難民認定手続きの結果は、6ヶ月、1年を要するので、その間、入国管理局も長期に被疑者を収容しなければなりません。入国管理局もこれほど、難民認定申請者が多くなると収容する場所がないわけです。
そこで、仮放免制度を使い、健康上の理由や裁判に出廷する等の理由をもって、一時的に仮放免にするわけです。もちろん入国管理局側の長期収容の弊害も考慮してのことだと思います。
仮放免は、収容しようと思えば、いつでもまた収容できます。
今回、「仮放免」となったあと、逃亡した外国人が、昨年から今年8月まで108人とされています。国籍の内訳は、フィリピン人14人、ブラジル人13人、スリランカ人12人などと発表されています。
先ほども書きましたが、入国管理局は、仮放免は収容しようと思えば、いつでも収容できるのです。これだけの逃亡者がでたので、刑事判決のあとは、必ず「再収容」ということになると思います。
今回の刑事事件と難民認定手続きの関係はあきらかではありませんが、私の感覚では、難民認定手続きもからんでいるのは確かではないかと感じます。
行政書士 瓜生 寛